科学はなぜわかりにくいのか - 現代科学の方法論を理解する

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51+p-CAIOcL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg

著者:吉田 伸夫

出版社:技術評論社

分類:科学読み物

出版日:2018/4/14

読みやすさ:☆☆☆(とても読みやすい)

 

東大理学部物理学科(専攻は素粒子論、特に量子色力学)出身のサイエンスライターによる、科学の方法論に関する著書。同じ著者による量子論素粒子論のように、ある分野に特化した自然科学系の専門書・一般書は数多く出版されているが、この本のように科学そのものを解説する内容はなかなか珍しいのではと思う。一般の読者にも読みやすく書かれている一方で、理系の研究者にとっても有益な内容が含まれており、改めて科学の在り方を見直すのには格好の図書と言えそうだ。

 

科学者にとって最大の屈辱は、厳しく反論されることではなく、受容されずに黙殺されることである。(45頁)

学説を信じるかどうかにかかわらず、「仮に、その学説が正しいとすると・・・」と演繹的に帰結を導き出すことが、自然科学の特徴である。(53頁)

予測される結果が・・・合致しなかったからと言って、提唱した科学者が非難されることは決してない。「このモデルは妥当でない」と確認することも、科学を推進するための研究の一部だからである。(55頁)

ある学説から演繹的に予測が導かれ、実験・観測で得られたデータとの比較によってその予測が否定された場合は、元の学説自体が反証されたことになる。言い換えれば、データと比較できる予測を演繹的に導ける学説は、「反証可能」なのである。(61頁)

本来の適用分野を越えて拡大解釈する場合、学説がデータと合致するかどうかのチェックが疎かにされがちであり、往々にして非科学的である。総合学説の構築と適用範囲の拡張は、全く異なったものであることを、きちんと認識しなければならない。(102頁)

科学的な研究では、異端の説は無視し権威者の主張をそのまま受け入れるーというのではなく、さまざまな新説を多くの科学者が検討した上で、信頼できる定説を練り上げるという民主的な方法論が採用されます。(144頁)

「科学者が論文を書きたくなるような事例が選択される」というのも、一種の選択バイアスである。(193頁)