物価とは何か

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著者:渡辺 努

出版社:講談社

分類:投資・金融・会社経営

出版日:2022/1/13

 

書名の通り、「物価」について非常にわかりやすく説明されている。我々の普段の生活とも大きく関係しているにもかかわらず、「物価とは何か?」と改めて問われると口籠ってしまう人が多いのではないだろうか。(特に最前線の)理論的な部分は我々一般人には完全に理解するのは難しいが、「物価」について知りたい人にとって本書は最適な入門書ではないかと思う。

 

インフレ率に関する人々の予想が変化すると、それと同じだけ金利も変化するということがわかりました。この現象は「フィッシャー効果」と呼ばれています。(92~93頁)

人々の流動性(=貨幣)に対する需要は、金利が上がると低下すると述べられています。この考え方は「流動性選好説」とよばれています。(95頁)

人々の予想するインフレ率が中央銀行の望む水準よりも高い場合は、金利を大幅に(人々が予想するインフレ率を超える幅で)上げることでその予想に対抗するーこれは中央銀行の政策運営の鉄則です。(中略)この鉄則は「テイラー原理」とよばれています。(108頁)

フィリップス曲線は失業率とインフレ率の間のトレードオフ関係を描写するものであり、しかもトレードオフの度合いをカーブの傾きとして定量的に把握できます。(124頁)

景気の悪化にともなう失業率の上昇とインフレ率の上昇の同時進行は、スタグフレーションと呼ばれました(不況を表すスタグネーションとインフレーションの合成語)。(125頁)

貨幣量の増加による失業率の低下という好ましい効果は一過性のもので、最終的には消えてしまい、インフレ率の上昇という、経済への悪影響だけが残るのです。(135頁)

物価下落自体はさほど大きな問題ではありません。むしろ、デフレが原因で企業が価格支配力*1を喪失し、それが米国経済の活力を削ぐことこそが重大な問題なのです。(287頁)

日本の企業は(中略)消費者の怒りを恐れるあまり、原価の上昇に対して、世代内での表面価格の引き上げというもっとも標準的な対応を諦め、小型化によるステルス値上げと、世代交代時の値戻しという、変則的な方向に向かったとみることができます。(301頁)

 

*1:ビジネスの現場では価格支配力(Pricing power)はきわめて重要な評価基準です。伝説的な投資家ウォーレン・バフェットは、「その企業が投資に値するよい企業かそうでないか見抜くカギは、価格支配力の有無」と言い切っています。さらに彼は、価格を上げてもライバルに顧客が流れてしまうことがないところまで行ければ、ビジネスとして大成功だ、10%の価格引き上げのために神に祈らなければならないとすればビジネスとして失敗だ、とも述べています。