絵でわかる地震の科学

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著者:井出 哲

出版社:講談社

分類:地球科学

出版日:2017/2/25

 

P波の変位は、震源で生じる破壊すべり、もしくはそれに対応する2つのモーメント(地震モーメント)の時間的な増加速度(モーメントレート)に比例します。(中略)P波が到着してから変位が0になるまで、観測点において変位を時間積分すると、地震の大きさを表す最も基本的な量のひとつ、地震モーメントの総量を計算することができます。(52~53頁)

海嶺で起こる地震の特徴は、小さい、浅い、正断層の3つです。(中略)トランスフォーム断層*1地震にはさらに、浅い、長いという特徴があります。(中略)沈み込み帯の地震の特徴は巨大、深い、逆断層です。(中略)アウターライズでは、しばしば浅い正断層地震が起こります。(61~68頁)

破壊伝播速度、すべり速度、ひずみ変化量などはすべて、地震の破壊すべりに関するスケール不変量です。(中略)地震の破壊すべりは空間的に相似(L∽W∽D)なだけでなく、時間的にも相似(L∽T)なのです。時間・空間的に相似性がなりたつとき、地震波エネルギーは地震モーメントに比例し、この比がもうひとつのスケール不変量となります。(101~103頁)

プレート境界のいちばん浅い部分で地震が起こると、破壊がゆっくり進行し、地震波のわりに大きな津波が引き起こされる(106頁)

微動からSSE*2までのすべての現象をまとめてゆっくり地震またはスロー地震と呼ぶことがあります。(中略)ふつうの地震の場合、地震モーメントは継続時間の3乗で変化しますが、ゆっくり地震地震モーメントは継続時間(の1乗)に比例するのです。(中略)ふつうの地震はこれまで説明してきたように、弾性体の中の破壊すべりであり、弾性波動方程式で説明できる現象です。それに対して、ゆっくり地震はむしろ、すべりに伴う力やエネルギーが空間的に拡散していく現象で、拡散方程式で説明できると考えられます。(113頁)

*1:海嶺をつなぐ横ずれ断層

*2:スロースリップイベント