力学の誕生―オイラーと「力」概念の革新―

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著者:有賀 暢迪

出版社:名古屋大学出版会

分類:力学、物理学

出版日:2018/10/10

 

今さら古典力学?と思っている人ほど読むべきかもしれない。内容的には「古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ(山本義隆著 )」と似通ってはいるものの、本書は数式がほとんど顔を出さないうえに、理科系の書籍としては珍しく縦書きである。このあたりは著者が文学で博士号を取得していることを考えると納得できるが、決して文系でも読みやすいという意味ではないので念のため。本書を読むと、現在の古典力学(特に力の概念)の形成において、オイラーがいかに重要な貢献をしたかが改めてよくわかる。また、動力学と静力学の統合(上記の山本の図書でも述べられているように、これはダランベールの原理として誤解されることが多い)において、ラグランジュの貢献が顕著なのは言うまでもないが、アイデアそのものはかなりオイラーに依っていることが本書から理解できる。

 

活力と死力の対置が却下され、慣性と力が区別されて、力は物体から切り離された。これがオイラーの到達地点であった。(173頁)

ベルヌーイらがおそらくは意図せずして進めた運動の科学と釣りあいの科学の統合を、自覚的に実行し、新しい「力学」に仕立てた業績は、やはりオイラーのものであった。(174頁)

ダランベールの考えは次のようなものであった。相互作用が起こる前の各物体の運動(A)を、相互作用が起こった後の各物体の実際の運動(B)と、もう一つ別の運動(C)とに分解しよう(記号的に書けば、A=B+C)。そうすると、この後者の運動(C)は、系全体として平衡状態にある(すべてを合成するとゼロになる)。